皆さん、こんにちは。
今回はまず、「グローバルシティズンシップ教育(GCE)」の考え方や価値観、スキルについてお話しする前に、前提知識として押さえておきたい考え方についご紹介したいと思います。
ヨーク大学の修士課程の授業でも、最初に学んだ考え方。教育とはそもそも何なのか?ということです。
教育(education)と混同しやすい、教化(Indoctorination)。それぞれの違いとは?
教育、とはそもそも何なのか?
さくっとネットで調べてみると、goo辞書では
「ある人間を望ましい姿に変化させるために、身心両面にわたって、意図的、計画的に働きかけること」
(goo辞書)
と定義されていました。調べ始めたら、おそらくいろいろな定義が出てくるかもしれませんが、あるべき教育の姿とはどのようなものなのでしょうか?
私がイギリスの大学院で学んだ教育(education)は、教化(Indoctorination)と比較して教わりました。その内容は以下の通りでした。
Indoctorination(教化)とは、「相手に批判や質問をする機会を与えずに、ある特定の考え方や信条を相手が受け入れるまで何度も繰り返し説くこと」を指します。最も極端な形が「洗脳」とされていて、教化という言葉より洗脳のほうがしっくり来る方も多いかもしれません。
この考え方の大きな特徴は、自分で考えて、批判や質問をするプロセスがないこと。そのため、言われたことをそのまま鵜呑みにして、信じ込んでしまうといったことが起こりえます。
一方で、education(教育)は、「オープンな議論と意見やエビデンスに基づく分析をした上で、今の社会に対する批判的な気づきを生み出す試み」としています。誰かの意見や考え方に対して、その考え方は本当にベストなのか、自分でチャレンジして、時にはその考え方を否定するという選択ができること。
ここで共通認識としてあるのは、「正しい」という考え方は存在していなくて、その場にいる参加者全員にとって、最善の考え方であるのか、そして自分はそれに賛同できるのかどうか、なのではないかと考えています。「誰が正しいか」を決めることが目的ではなくて、どのアイデアが最適かということを決めるのだと思います。
日本の教育の問題点。教化(Indoctorination)が行われていないか
「教化」という言葉は、宗教の文脈で使われることがあるようですが、確かに教育も似たようなものになりかねないですよね。与えられた規則やルールを守ることが正しい、先生を敬うのが当たり前、女の子の制服はスカートであるべき、などなど。
もちろん守るべきルールもありますが、どうしてそのルールや考え方が浸透しているのか、守らないといったいどうなってしまうのか?といった背景や理由を考えずにただ従うことは、Indoctorination(教化)に近しいのではないかと私は思います。
教育を受ける側にも、物事や誰かの意見をいい意味で疑い、疑問を投げかける力が必要だと思います。いわゆる「批判的思考力」です。それは、教える側が積極的に質問し、考える力を養う時間を習学度に応じて教育現場で作っていくことが重要になります。
批判的思考力を養っていくグローバルシティズンシップ教育
批判的思考力(Critical Thinking)は、グローバルシティズンシップ教育(GCE)が大切にしているスキルの1つです。現代社会を生きる上で、批判的思考力を身につけることで、どのライフステージにおいても自尊心を保ち自分自身を守ることにつながりますし、新たな視点が生まれてイノベーションにもつながります。
具体的にはどういうことかと言うと、相手に言われたことを疑問も持たずに信じてしまうことは、自分の軸がなくなってしまい、何がしたいか分からない、自分は何が好きなのか分からない、というような「迷子」になってしまうと思います。もし自分を傷つけるようなことを言う人がいたとしても、考える力があれば、その考え方を信じるべきかそうでないか、自分で判断できるはずです。
Don’t believe just me, challenge me.
疑問を持ち、質問し、批判的に考えていくことで、自分なりの答えを見つけ出していく。
教授から、“Don’t believe just me. Listen to other opinions, challenge me, and find your own answer.” と言われたときの衝撃は今でも忘れられません。
考えを押し付けるのではなく、ディスカッションやディベートなどアクティブラーニングを通して一緒に考える機会を創出していく。GCEはこの前提に立っています。
皆さんは、教育と教化の違いについてどう思いましたか?
これまでの学校生活や職場において、それぞれ思い当たる経験はありますか?
Reference
Ivan Snook (1972), “Indoctrination and education”
Harber(1991), “International Contexts for Political Education”